死亡届を出すと銀行口座が凍結する!?
死亡届と銀行口座は連動しない
私たちがお客様とお話をしていると、「死亡届を出すと銀行口座が凍結するんですよね?」とか「故人の口座からお金を下ろしたいので、まだ死亡届は出さないでください」というお話をよく頂戴します。
結論から申し上げると死亡届を出しただけでは故人様の銀行口座は凍結されません。
ではなぜこの「死亡届を出すと銀行口座が凍結する」という誤情報が多くの方に広まっているのでしょう?
ネットで誤情報が拡散されている
まず考えられるのはネット上で誤情報が拡散されているという可能性。
ネットで「死亡届 銀行口座」なんて検索すると、ほとんどのサイトには「死亡届を出しても銀行口座の凍結とは関係ない」と正しい情報が書いてありますが、やはり一部のサイトには「死亡届を出すと銀行口座が凍結するから、早めにお金を引き出しておきましょう!」と書いてありました。
身内が亡くなって手続きをするといった経験はなかなか多くすることではありませんから、凍結するor凍結しないと両方の記載があるとよりリスクが大きい方を信じてしまいがちですから、仕方ない気もします。
口コミで広がっている
続いて考えられるのは人づてに「死亡届を出すと銀行口座が凍結するよ!」と聞いてしまった可能性。
私たちがお客様と話していて「死亡届を出すと銀行口座が凍結する」と信じている人はこのパターンがほとんどです。
おそらく死亡した後に暗証番号などが分からずつい銀行の方に「実は○○が亡くなりまして、、口座からお金を下ろしたいんです」と伝えてしまったのでしょう。
銀行は死亡届が出されているかに関わらず、口座の名義人が亡くなったことを知ったらすぐに口座を凍結させますので、「死亡届を出すと銀行口座が凍結する」と思い込んでしまったのでしょうね。
突然銀行から連絡が来た
最近では少なくなりましたが、新聞などへ訃報の掲載をした場合や、葬儀会館等に掲出されている名札を見て銀行からご遺族へ連絡することもあるようです。
こうなるとタイミング的に「死亡届を出したらすぐ銀行から連絡が来た!」と思っても無理ありませんよね。

というわけでみなさまの周りやネット上で誤った情報が流れているかもしれませんが、とにかく「死亡届を出しただけでは故人様の銀行口座は凍結されない」ということは覚えておいてください。
凍結口座から葬儀費用を下ろす方法
人が亡くなった瞬間から相続が始まり同時に故人様のお金は相続財産になりますから、銀行口座が凍結している場合は相続手続きが終了するまで凍結状態が続いてしまいます。
とはいえ故人様の葬儀費用を遺族さんで建て替えるのは難しいということもあるでしょう。
そのような場合はきっちり手順を踏むことで銀行口座が凍結していても、葬儀費用を下ろすことが可能です。
この制度を「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」といい、相続人が当面の生活費や葬儀費用などが必要な場合に相続預金の払い戻しを受けることができます。
せっかくなのでこの「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を詳しくご紹介します。
払い戻しできる額
下記の計算式で求められる額については家庭裁判所の判断を得ずに、各相続人が単独で引き出すことができます。
たとえば口座に1200万円残したお父さんが亡くなって、その奥さんと息子2人がお父さんの預金を相続する場合、奥さんが単独で引き出せる額は200万円、息子さんはそれぞれ100万円ずつとなります。
(奥さんの計算式)1200万円÷3×2分の1
(息子さんの計算式)1200万円÷3×2分の1×2分の1

もしも同じ金融機関の複数の支店に預金があった場合は、その金融機関からは150万円が引き出しの限度となります。
払い戻しに必要な書類
上記の「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用する場合に必要な書類を下に書いていますので、参考にされてください。

ちなみに故人様が有効な遺言を残していた場合、この「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」が利用できない場合があります。
「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を利用したい場合は出来るだけ早めに銀行へ相談してみましょう。
凍結した口座の解除の流れ
大切な方が亡くなって銀行口座が凍結してしまった場合の解除方法についてご紹介します。
大まかには下記の流れですが、金融機関によって微妙に違う場合がありますので、大まかな参考としてご覧ください。
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- 引き落とし先ヘ連絡
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口座が凍結してしまうと生前に設定した引き落としも出来なくなります。
家賃や水道光熱費、ローンの支払いなど引き落としされている会社へ連絡し、解約や新しい口座への引継ぎを行います。
金融機関への連絡の後でも構いませんが、うっかり忘れてしまうと未納・滞納に繋がってしまうので、出来るだけ早く各企業へ連絡するようにしましょう。
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- 金融機関へ死亡の連絡
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まずは故人様が持っている金融機関へ死亡の連絡をします。
各金融機関はこの段階で口座の凍結を行います。
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- 口座凍結解除の手続き
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解除に必要な書類や情報を持って金融機関にて口座凍結解除の手続きを行うと凍結された口座が元に戻ります。
凍結口座解除に必要な物
凍結口座解除に必要な物は有効な遺言書が残されているかどうかで異なりますので、それぞれ説明します。
有効な遺言書も遺産分割協議書もない相続の場合
戸籍謄本 |
※もしも法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合は戸籍謄本は不要です。 |
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印鑑証明書 | 法定相続人全員分 |
通帳 | 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む |
遺産分割協議書がある相続の場合
遺産分割協議書 | 口座にある資産を誰が受け取るか明確に記載された書類の原本 |
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戸籍謄本 |
※もしも法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合は戸籍謄本は不要です。 |
印鑑証明書 | 法定相続人全員分 |
通帳 | 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む |
有効な遺言書がある相続の場合
遺言書 | 資産の分割割合や承継人が明確に記載された遺言書の原本 |
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家庭裁判所の検認済証明書 | 遺言書の存在と内容を家庭裁判所が確認したことを証明する書類 ※公正証書遺言または自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要です。 |
戸籍謄本 |
※もしも法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合は戸籍謄本は不要です。 |
印鑑証明書 | 銀行に預けている資産を受け取る人の印鑑証明書 |
通帳 | 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む |
死後の口座の扱いは慎重に!
ということで今回は死亡届を出しただけでは銀行口座は凍結しないこと、凍結した場合のお金の引き出し方と凍結の解除方法などを説明しました。
「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」もご紹介し、凍結後でも一定のお金が引き出せることは説明しましたが、場合によっては単純相続したとみなされその後の相続放棄などが出来なくなることもあり得ます。
出来るならば葬儀費用などはご親族様でいったん支払い、相続手続き後に故人様の口座から返してもらうようにするとトラブルもなくスムーズです。